門柱に黒猫

門柱の上に、黒猫がいた。
恐らく野良猫であろう、残念ながら毛並みは美しくない。
というか、荒れている。
それでも気持ちよさそうに日向ぼっこを楽しむ姿は微笑ましく、ずっとそこにいてくれればいいのに…と内心思う程だ。
尤も、餌付けの予定はない。
近隣には「野良猫が可哀想」といった理由で餌を上げる老人が多いが、そうした行為そのものを忌み嫌う住民も少なからず存在するのだ。
理由はそれだけではないものの、「最後まで世話をする」覚悟のない私は専ら遠目で眺めるのみ。
ま、警戒心の強い野良猫たちが近寄ることもまずないけど。
で、黒猫である。
偶々洗濯物を下していた時、彼(彼女かもしれぬ)はそこにいた。
一瞬、目を疑った。
野良猫の存在は知っていたものの、まさか門柱で佇むとは。
そんな私の視線に気付いたのか、野良猫もまたこちらを見ている。
毛並みは荒れているけど、その眼光は決して濁っていない。
思わず声をかける。
大丈夫だよ、と。
僅か数秒の出来事だが、私の心は十分満たされた。
その後、外出の為ドアを開けたが、残念ながら黒猫はいなかった。
人の気配を感じ、何処かに立ち去ったのだろう。
それでもいいさ、と私は思う。
きっと彼(若しくは彼女)は時折此処で身体を休めるのだろう。
そうした場所に選ばれただけで心は満たされるというものだ。